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靴屋の小話#09|資材について、ソール編

ZUCCO
ブルーオーバーのサンプル職人。型紙から、縫製、製靴までハンドメイドで靴を作り上げる。工場手配、資材段取りも行っている。
@blueover_zucco

 この連載は、私の仕事――つまり、靴をつくるということに関して、できるだけわかりやすくお伝えしたいと思いnoteに書いたもの数回分を、まとめたものです。

インソールのこと

ソールとは

ソール(sole)とは靴の底の総称のことです。

ソールは主に3つに分かれます

  • インソール
  • ミッドソール
  • アウトソール

どれも私たちのblueoverでも、よく出てくる言葉なので、ひとつひとつ説明する機会をもてればと思います。

そして今日はインソール。

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インソール

中敷という方が聞きなじみがあるかもしれません。靴の中で直接足に触れ、歩行時の衝撃から足を守るクッションの役割や、靴のフィット感を高め、足を支えてくれます。

私たちのインソール

blueoverでは主に2種類のインソールを使っています。

1つ目は、ライニングと同じ素材の革に、フェルト生地を貼りあわせ、ウレタンを一部装着したカップインソール。marco、PHOLUSというモデルで採用しています。

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2つ目が、ブランドネームを印刷したキャンバス生地の裏に、低反発ウレタンを張り合わせたフラットインソール

blueover、blueover、blueover、blueover.......といっぱい印刷しています。mikey 、おかっぱ、一部のSHORTY TRで採用されています。

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わたしたちは国内のインソール屋さんにお願いしてインソールを作成しています。

あとがき

どの靴でも、インソールはクッションがありすぎても履きにくい印象もあります。フィッティング時に、その点も注意しましょう。※靴の試し履きの時には両足履いて、しっかり店内を歩きましょう!!

足の汗を吸いとってくれる吸湿性の良いものを選ぶのがおすすめです。

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また、靴を長く愛用していると、インソールへたれてしまい、交換したいなぁと思うときがあります。100円SHOPや東急ハンズなどで、購入する方法もあるのですが、その靴のブランドさんに相談したら、ブランドオフィシャルの新しいインソールを購入できる場合もありますよ。(1000円~2000円くらいかな。)

ミッドソールのこと(前編:スニーカー目線)

今日はミッドソールのお話をしていきます。長くなりますので、2回に分けて書いていきます。

ミッドソールとは

アウトソールの内側にあり、アッパーとアウトソールの中間部分にあります。名前のまんまですが、スニーカーと革靴でちょっと違う印象を受けます。

スニーカーからのミッドソール目線

歩行のとき、足にかかる衝撃を吸収してくてるので、負担を軽減してくれます。スニーカーでのミッドソールは、クッション性、反発性、軽量性、耐久性が鍵になります。

下の写真のソール部分の白いところがミッドソール。

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スニーカーミッドソールの歴史

スニーカーでは靴のつま先から、かかと部分までミッドソールを引いています。一般的な革靴のミッドソールとは印象が異なります。

出来事としては60年代後半~70年代にこの仕様が開発され、それに伴って、クッション性の高く軽量なEVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(エチレンビニルアセテート ethylence vinyl acetate))が誕生し、進化してきました。

そこからEVA以外のクッション素材の開発も進められています。スポーツシューズに革命が起きました。

EVAとは

私たちblueoverではEVAを採用しています。

ポリエチレンよりも柔軟性と弾力性を持ちます。また、ウレタンと比較して、劣化がおきにくいです。(※ウレタンは湿気による経年変化を起こすことがありますが、取り扱いや保管方法に注意すれば長持ちさせることが出来ます。)

靴箱にしまった何年も前の靴を久しぶりに開けてみたら、ソールばボロボロ、あるいはベタベタなんてことがありますが、これは加水分解と呼ばれます。EVAは加水分解はありません。

寒い場所などでも硬くなり難い上、耐久性にも優れ、風雨や紫外線を浴び続けても劣化しにくい素材です。また比重が小さく、塩化ビニールやゴムと比べても非常に軽いです。

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ワンシーズン前のSHORTY TRでは、EVA部分にカラーをつけたEVAを積層し、色遊び。

blueoverのEVA

EVAの配合によって硬度を調整することが出来ます。私たちblueoverでは普段から履いていただく、街履きにちょうどよい硬度に設計しています。ランニングシューズと比べると少し硬い印象を持たれるかもしれません。

長時間歩いたときに疲れにくいように、硬度を少し高くし、ランニングシューズより反発性を持たせています。

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国内の加工底屋さんがEVAのシート、アウトソールのシートを1つ1つ裁断してくれて貼り合わせ、削りだしてくれています。とても手間がかかる作業です。私たちの靴はたくさんの人たち支えられて作られています。

ミッドソールのこと(後編:革靴目線)

昨日はミッドソールの前編のお話をさせていただきました。スニーカー目線ではアウトソールの上にありました。今日は革靴の観点からお話していければ、と思います。

革靴目線のミッドソール

革靴目線、というと語弊があるかも。ここで説明したいミッドソールは、靴の底縫いと深く関係しています。

靴の底縫い

靴の底付けの製法はたくさんあります。日本の多くのブランドはセメンテッド製法という底付けの方法を採用しています。アッパーと呼ばれる靴の上部分と、アウトソールを接着剤で圧着し、くっつけます。(さらに詳しくは別の会で。)こちらは底縫いをしていない製法です。

他にグッドイヤー製法やマッケイ製法など、アッパー部分とアウトソール貼った後、底を縫う製法があります。レザーソールの靴は、とくに底縫いをしている靴が多いです。底剥がれ防止も出来ますし、見た目のかっこよさも増します。

セカンドソール/トリプルソール

底縫いのとき、アッパーとアウトソールの間に、革やゴムシートなどを一枚挟んで、底全体に厚みを持たせている靴があります。トリッカ-ズはグッドイヤー製法ですが、アッパーの周りをぐるりと巻いたウェルトと呼ばれる細革と、ごつごつしたアウトソールの間にミッドソールを挟みこんで、3層で出し縫いをしています。

重厚感、存在感のある靴に仕上がります。

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<引用>

blueoverに入る前の個人で活動していたときは、革底の靴ばかり作っていました。そのときはブラックラピトという製法で底縫いをしていました。マッケイをしたあと、出し縫いをする方法で、そのときはミッドソールは不可欠でした。

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写真は当時の靴。ミッドソールを挟むと、底にボリュームが出て好きです。レザーソールでも耐久性や耐水性が増します。

ただ、1枚のみ貼ったシングルソールと比べると底全体が硬い印象になります。『かえり』がシングルソールより劣るので、足馴染みに関してはシングルのほうがいいです。

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だし縫いは上の写真のようにアッパーの周りにぐるりと底縫い。

ブーツでよく見られるミッドソール

ワークブーツなどでよく見られるのですが、ミッドソールを貼りあわせて、底縫いを施したあと、ラバーのアウトソールを接着している場合もあります。下の写真の場合はウェルトミッドソールを2層で縫い合わせて、アウトソールは接着しています。

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<引用>

blueoverのミッドソール

blueoverではマッケイ製法とグッドイヤー製法を採用したモデル、marcoとPHOLUSがあります。

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marcoはミッドソールをマッケイ製法で底縫いしたあと、アウトソールを接着しています。

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PHOLUSはグッドイヤー製法ですくい縫いと出し縫いをしたあと、アウトソールを貼りあせています。どちらもミッドソールが底縫いされ、アウトソールは底縫いされず、接着でくっついています。

スニーカーなのに、ミッドソールと底縫いを採用した理由は、アウトソールが減ってきたとき、アッパーにほとんど影響をあたえずソール交換ができるため。ミッドソールがあることで、アッパーに触らずにソール交換ができます。
長くご愛用いただくことを考慮して、採用しています。

あとがき

2回にわたってお話したミッドソール。すこし難しい内容だったかと思うのですが、お分かりいただけたでしょうか。

まとめると、わたしたちblueoverでは、スニーカー目線のEVAのミッドソールも、革靴目線の底縫いにおけるミッドソール、両方採用しています。

過去からの技術も、今の新しい技術も、メリット部分は活かし、今後もよりよい靴を求めていきたいと思っています。

アウトソールが出来るまで

主に、アウトソールには2種類ある

素材はいろいろありますが、量産時に使われるアウトソールは主に2種類あります。

  • 成型底
  • 加工底

例外はオーダー靴などでしょうか。底材をそれぞれ切りだして、底付け作業と合わせて加工することが多いので、上記のどちらも採用できない場合があります。

成型底とは

成型底とはアウトソールのカタチの金型に材料(ゴムやウレタン、EVAなど)を流し込み、焼いたり、膨らましたりして作られます。金型をデザインやサイズによって用意することが多く、初期費用が高めですが、生産効率がよく、短時間でたくさん作ることが可能。長靴やバルカナイズ製法の靴の底も成型底の中の一種です。

blueoverではないのですが、わたしが立ち上げたAROAというレディースの靴ブランドではナースシューズに使われるウレタン成型底を採用しています。底を工場さんに発注すると、加工底と比較し、すぐに出来上がってきます。クッション性にも問題なしです。

素材は一つの素材で作られることが多いです。(成型底で作られたパーツを何個か貼り合わせている靴もあります。リーボックのポンプフューリーを思い出します。。3種類くらいの材料で、いけつかのパーツが合わさって出来てたような。。)

ビブラム社の有名なソールユニット#1136も(素材はVibramTrontというブランド独自の配合のものですが)成型底ですよね。

加工底とは

blueoverで使用しているアウトソールは加工底です。

※注意※
ここでいうアウトソールは底つけ工場さんが、底材として認識しているユニットのこと。スニーカーソールのEVAパーツはミッドソール、ラバーがアウトソールという場合もある。わたしも以前ミッドソールとアウトソールを分けて説明させてもらいました。

加工底といってもいろいろあります。革底のユニットを作ることも加工底です。

今回は私たちの加工底の作られる流れを写真とともにご紹介します。

①靴底のデザインの種類やサイズごとに、抜き型を作成し、EVAのシートとラバーのシートを裁断します。ラバーの模様など、裁断は同じ模様になるよう、同じ方向で。取り勝手も考えながら。

②接着テストをした後、①で裁断したEVAとラバーを貼り合わせます。ウェッジ(ヒール)がある場合は、EVAがかかとが高く前が薄くなるように、シートが傾斜になっていたり、2枚重なっていたりします。

③アウトソールのゲージにあわせて、バフで余分な部分を削ったり、側面をきれいに整えたり、角度(フレア角)をつけたりします。手作業が多く、職人さんの技が光ります。ひとつひとつ手間がかかるので、納期は長め。

あとがき

成型底も、加工底も、アウトソールはとてもシビアな設計です。1mm単位でも大きければ、靴の底付けの際に貼りあわせの感覚がズレます。また、もちろん出来栄えも変わってしまいます。

ですので、底のサンプルを作る場合は、加工底屋さんはもちろんですが、底付け工場さんとも細かい打ち合わせが必要です。底付け工場さんそれぞれに癖も違うので、量産をお願いする工場さんに直接のご相談をします。何度もサンプルを作って底付けして、サンプルを作って、底付けして、を繰り返して。

やっと新しいモデルに採用していきます。

さて、いかがでしょうか。今、新しいアウトソールを模索中です。4日前くらいにファーストサンプルがやっと上がってきて、まだまだ修正は必要ですが、とても良くなりそうです。

春にお目にかかれるよう進めていきますので、お楽しみに〜。

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