10th PROJECT:03.革と、底材
前回の「仕様を決める」では、10周年記念のソールを交換できるマイキーこと「みんなのマイキー」には、ブルーオーバーが長年培ってきたノウハウを活かしてマッケイ製法を採用することが決定!
そしてアッパーは、ブランドオリジナルのスムースレザーの表面を起毛させてヌバックレザーを作ってみることに…! 今回は件のヌバックレザーのサンプルをチェックするところから始まります。
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人物紹介
渡利(ワタリ)
blueoverの発起人であり、デザイナー。たまの趣味は木彫り。
江川(エガワ)
blueover / structのスタッフ。冬の間、編み物にはまった。
オリジナルスムースレザーの表面を起毛させてヌバックレザーに。サンプルの出来やいかに?
江川
前回から少し時間が経ちましたが、サンプルの状況どうでしょうか?
渡利
革があがって来たところ。防水ヌバックとオイルのバフがけ仕上げのやつ。どうかな?
江川
オイルの方、思ってた感じと違いますね…
渡利
オイルレザーのタイプのやつは、オイルが染み込み過ぎて、ヌバックにしようと表面を起毛させるために銀面をやするとき滑っちゃうらしくて、なかなかきれいに仕上がらないんだって。
タンナーの人も厳しい顔してたわ。あと表面のばらつきがひどくて、なかなかモノにならないとも言ってた
江川
はは~。そんなことが!
やってみないと分からないもんですね…
でも防水レザーを起毛させた方は、良い感じです
渡利
防水ヌバックの方は、表情崩れてないよね。いい感じで仕上がってる。
でね。ちょっと、これ見てよ。これは防水じゃない普通のヌバックに水をかけた場合
江川
うん、まあ、こんなものですよね
渡利
お次はこのヌバック!
江川
わ~っ、すごいですね。バチバチ水弾いてます!
渡利
そうなの。すごい防水機能なの。
なんか革の状態で見るとものすごい水弾いてるよね
江川
水がころころしてますもんね。
あれ? マルコの防水処理も同じものですか?
渡利
そう。同じ防水加脂材を入れてなめしてるから、同じように水を弾く
江川
もうこれは、「みんなのマイキー」に使うのは防水ヌバックに決まったも同然じゃないですか?
渡利
そうやね。こんだけ防水性能があって、ヌバックの質感も保たれているし。これで靴に仕上げて見ようと思う
底材のサンプルも到着。一見ただのソールですが…?
渡利
で、ソールのサンプルも用意できたんですけど
江川
ふむふむ、私からは、「ああ、ソール材だな」
ということくらいしか分かりませんが…
渡利
そうだよね。別に奇抜にしようとしてないから。そのリアクションでも仕方ないんだけど…まあ、説明すると、定番マイキーのソールユニットはEVAの削り出しとアウトソールのラバーの貼り合わせてつくった加工底
江川
はい、そうですよね
渡利
今回はマッケイなので、釣りこんだアッパーと加工底の間にマルコやルンマーと同じように、ワンパーツ”アイナカ”を挟むことになるんですね
渡利
この”アイナカ”をつり込んだアッパーとマッケイで縫い合わせる。
そこに更に、ソールユニットを張り合わせるって工程
江川
なるほど。なんとなく、マッケイらしくない見た目になりそうな予感がします。これはあえてなんでしょうか?
渡利
スニーカーっぽく見せたいからね。
マッケイ製法って革靴で採用されることが多い手法だから、合わせるソールは茶色や黒色が多いんだけど。今回はこの”アイナカ”も白色を手配して、張り合わせもEVAと”アイナカ”がツライチになるようにする。
マルコなんかはコバが出るように設計してるんだけど。これは全周囲ぴったっとなるようにしているんです
渡利
まだパーツ段階だけど、靴にしたときはナイキのコルテッツのようなディティールに仕上げようと思ってます
江川
ソールだけ見ても、思ってもみないくらい色んな選択肢から選び抜いて仕様を決めてるんですね…
渡利
まあ、どんな仕事でも意外なところで苦労してたり、工夫が盛り込まれたりしますよね。お客様は具体的にはそれが何か説明できなくても、そういったディティールを感じとってもらえることは多々ある。
だから手は抜けない。甘く仕上げると見抜かれちゃうからね
江川
私も日々、ひしひし感じてます。
まだまだ靴になってないですが、次はいよいよ靴に仕上げていく感じですかね?
渡利
そうね。これらを靴にしてみる段階だね。うまくいくといいんだけど。
とにかく進めていきます!
江川
たのしみです~
よろしくお願いします
次回、いよいよばらばらだったパーツが合わさって靴の形に!
すんなり完成にこぎ着けるか…? お楽しみに~