渡辺平日エッセイ|その靴いいね。どこの靴?

 渡辺平日
日用品愛好家。雑貨とインテリアのほか、おやつや喫茶店の話をよくします。現在、「LaLa Begin」「北欧、暮らしの道具店」などでエッセーを連載中。 twitter:@wtnbhijt

※この記事は2019年に執筆された記事を再投稿したものになります

ことのはじまり

「〈blueover〉のスニーカーをしばらく履いてもらって、使用感をレビューしてくれませんか?」

struct(blueoverの旗艦店)のコイデさんからそう声をかけてもらったのは、今年の5月の終わり頃のことでした。そのときの心中は、うれしさ半分、とまどい半分といったところでしょうか。もともと彼とは知り合いで、structのことも知っていたので、オファーしてもらえたのはとても嬉しかった。その一方で、靴に関してはあまり明るくないから、ちゃんとレビューできるかが不安でした。うまく期待に応えられるだろうか。  

日本製 スニーカー blueover mikey 渡辺平日さんの連載 インソールの光景

……かなり悩みました。でも、今はこうしてパタパタとキーボードを叩いています。決め手は、コイデさんの「好きなように書いてください。良いところも悪いところも、全部含めて」という言葉。ここまで信頼してもらえて、物書きとして冥利に尽きるなと思いました。そして、その気持ちに応えたいと強く感じました。気になるところも含めて、率直な言葉でレビューしていきます。どうぞよろしく。 

2019/6/6

この日、blueoverのmikeyが家に届きました。さっそく開封するとしましょう。

日本製 スニーカー blueover mikey 渡辺平日さんの連載 靴全体の写真

……その、夜明け前の海のような青さが、僕の心をそっと撫でました。なんて美しいブルーなんだろうか。 

さっそく試し履きしたいところですが、撮影を控えているので我慢。やっぱり、なるべく綺麗な状態で撮ってあげたいですよね。でも、仕事のことはちょっと脇において、早く履いてみたいなあ。それにしても、靴でこれだけワクワクするのはずいぶん久しぶりな気がします。最初に書いたように、僕はそこまで靴に詳しくありません。より正確に言うと、こだわらないようにしています。仕事柄、毎日徒歩で長時間移動するせいで、すぐに履物をダメにしてしまうからです。

だから、いつもシンプルで使いやすい、どこにでもあるようなスニーカーを選ぶようにしています。そこに遊び心が介在する余地が無いから、靴選びでときめくこともすっかり無くなってしまいました。

日本製 スニーカー blueover mikey 渡辺平日さんの連載 ライニングの光景

そんな靴事情に疎い僕でも、分かることがひとつだけあります。それは、このスニーカーが、かなり面白そうなプロダクトだということ。シンプルではあるけど、平凡ではないというか。早く使ってみて、その直感を確かなものにしたいと思います。

mikeyについて 普遍的な使いやすさと美しさを体現した、blueoverを象徴するモデル。どこまでもシンプルな意匠でありながら、他のどのスニーカーとも違う独自性を有している。ちなみに、そのキュートな名前は『グーニーズ』登場人物であるマイキーに由来している。

    2019/6/8

    我慢しきれずにちょっとだけ履いてしまいました。まず驚いたのは、そのしっかりとしたホールド感。足首をがっしりと掴まれているかのような履き心地で、非常に頼もしい。まさに「堅牢」という形容がしっくりきます。 その一方で、(長いあいだ歩くと、しんどいかも? )という懸念も生まれました。いつもはゆったりした作りのものを選んでいるから、そのフィット感が妙に気になるというか。またもや、うれしさ半分、とまどい半分という心境に。(まあこのあたりは実際に使ってみないと分からないよね……)と思いながら、mikeyを靴箱にしまいました。

    これはまったくの余談ですが、その日のメモを読み返すと、「足首を掴まれて不死をもたらす川に浸されたアキレスになった気分」と書いてありました。なんの話だ? 

    2019/6/13

    この日、mikeyを撮影するために友人の家へ向かいました。おりしも季節は梅雨。(いったい、どうなることやら)と空をにらんでいましたが、なんとか持ちこたえてくれました。

    お昼すぎくらいに目的地へ到着。雑談もそこそこにバッグからmikeyを取り出しました。友人が「可愛い靴だね。えっ、これ、革づくりなの?」と驚く。たしかに、一見、革靴には見えないですよね。遠目には普通の布のスニーカーのようにも思えます。 しかし、身に付けてみると、すぐに「普通」ではないと分かります。布靴のような気軽さがありながら、革靴ならではの頼もしさもある、実に不思議な履き心地。

    その理由をstructのコイデさんに尋ねると、「つま先と踵に芯が入っているからホールド力が高く、見た目、着用感ともにしっかりとした仕上がりになっているんですよ」とのこと。なるほど、その堅実な使い心地にはそんな秘密が隠されていたんですね。そんな具合ですので、カジュアルな服装にはもちろん、カッチリしたファッションにもよく馴染んでくれます。

    友人に促され、その場で試し履きすることになりました。新品の靴を家のなかで履くだなんて、いったい何年ぶりかしらとつい照れ顔に。さらに友人が「すっごく似合ってるよ」なんて褒めるものだから、ますます照れる。

    そのとき、ふと、(似合うを超えた奇妙な感覚がするな。馬が合うというか……)という奇妙な感慨にとらわれました。 

    思うに、僕と彼はどこか似ているのでしょう。僕は小さい頃から頑固で、坊っちゃんじゃないけど、子どもの時から損ばかりしています。一方で、この靴を作っているblueoverも、今どき珍しいくらいに一徹なメーカーだと聞きます。そこから生まれるプロダクトが「素直」なはずはないでしょう。

    あるいは、僕らは共鳴しているのかもしれません。ちょっと大げさに感じられるかもしれませんが、出会うべくして出会ったような、そんな気がしました。そんなことを考えているうちに、なんだか雲行きが怪しくなってきました。太陽が出ているうちにと慌てて撮影へ出かけることに。 

    アッパー(靴の外側)にはベロアを採用。アウトドアユースの際には防水スプレーを対策を。ライニング(靴の内側)には吸湿・放湿性に優れる天然皮革を使用しているので夏場でも快適。麻の靴下と一緒に履いたらかなり気持ちよかったです。歩きながら友人に「自然物と人工物」というコンセプトで撮影してはどうかと相談しました。はじめて目にしたときから、このプロダクトに「手づくりと機械づくりの中間」という印象を抱いていたからです。それはいいねとなって、草の茂みやアスファルトの上で撮影をすることに。 

    硬めのソールを採用しているため、長時間歩いても疲れづらくなっています。町歩きにもぴったりですね。果たして、それはとても素敵な撮影会となりました。自然物にも人工物にもよく馴染み、その魅力を存分に発揮してくれたように思います。これはまったくの偶然なのですが、コイデさんたちもほとんど同じコンセプトで撮影を行ったことがあるそうで、すこし驚きました。もしかしたら、mikeyがこっそり耳打ちして教えてくれたのかもしれませんね。言うまでもなく、「もの」に口はありませんが、優れたプロダクトはこういうふうに語らずして語ることがよくあります。

    皮革メーカーに依頼し、その独特な色合いを表現しているそうです。手作業による部分が多いため、シーズンごとに微妙に風合いが異なりますが、それが「手づくりと機械づくりの中間」という印象を与える要因になっているように思います。それにしても……。梅雨特有の重い空気のなかにあって、ブルーのスニーカーはどこまでも清々しく、颯爽とした気持ちになりました。さてさて、ようやく撮影が終わったので、明日から本格的に履いていくとしよう。

    2019/6/19

    以前、ある小説家が「いいスニーカーを履くと、街の人から『それってどこの靴ですか?』とよく尋ねられるようになる」と語っていました。僕はその作家の熱心なファンですが、(嘘を書くような人ではないけど、さすがにそれはないよな)と半信半疑でした。……このスニーカーに出会うまでは。

    もともと知らない人から話しかけられやすいタイプですが、街を歩いているときに「それってどこの靴ですか?」と尋ねられる機会が明らかに増えました。この日など、信号待ちをしているときに同い年くらいの男性に質問され、答えているうちに信号が赤になり、電車に乗り遅れるという悲劇に見舞われました。もちろん、ぜんぜん悪い気はしませんでしたが。 

    2019/7/10

    mikeyを履きはじめて、変わったことがふたつあります。ひとつめは、前よりも天気を気にするようになったこと。革靴だから湿気は厳禁。雨が降らないかどうか、念入りに気象情報を見るようになりました。なんとなく、大人になったという感じがします。

    でも、予報が外れる場合もあるし、専門家でも予想できないようなゲリラ豪雨に見舞われるケースもあります。それに備えて常にレインカバーを持ち歩くようになったことが、ふたつめの変化。

    これは日本の雑貨メーカーが立ち上げた〈ALL DAY ALL DRY〉というブランドのプロダクトです。小さく折りたたんで持ち運べるし、そのわりにはソールがかなり頑丈なので、かなり重宝しています。(旅行先へ持っていきたいけど、途中で雨が降ったら困る。でも、わざわざ予備の靴を用意するのもちょっと……)という悩みも、これを携帯しておけば一発で解消です。

    「そこまでして、履きたい?」という声が聞こえてくる気もしますが、そう、そこまでして履きたいのです。 

    2019/7/25

    ネットショッピングを楽しんでいたらblueoverのバナー広告を発見。「相変わらず、シャレてるなあ」などと見ていたら、「サイズ交換 1回可能」という文言が目に入ってきて驚く。さらに、往復の送料もメーカーが負担。

     

    靴をネットで買うのはちょっと不安だから、購入者としては助かります。とはいえ、この施策によるメーカー側のコストは少なくないはず。つい、買い物をするのも忘れて、その意図について考え込んでしまいました。

    たぶんですが、「自分たちのものづくりに自信がある」ということだけじゃなくて、「正しいサイズの靴を履いて、快適に暮らしてほしい」というメッセージが込められているような気がします。おそらく、そう大きくは間違ってはいないと思いますが(今度、聞いてみることにします)。

    2019/8/13

    mikeyを使いはじめて2ヶ月が経過。メモを見返してみると、その間に21回も履いていました。だいたい3日に一回のペースですね。ここをひとつの区切りとして、良かったところと、気になるところを振り返ってみました。

    いちばん素敵だなと思ったのは、足元の印象がビシッと決まるところ。Tシャツにデニムみたいなカジュアルな格好でも、これを合わせるとずいぶん雰囲気が引き締まります。もちろん、シックなジャケットスタイルにもしっかり調和してくれますよ。

    しっかりといえば、この靴の履き心地の良さにも感心しました。今まで経験したことのないホールド感だったので、最初は足を傷めないかを心配しましたが、まったくの杞憂でした。革の靴だから、だんだんと自分の足の形に馴染んでくるんですね。

    タウンユース用に硬度を設計したというソールも秀逸。僕は扁平足気味なので、わりとすぐに疲れてしまうんですが、おかげさまで街歩きがはかどりました。「足が疲れにくい」という謳い文句のスニーカーをいくつか持っていますが、そのどれよりも快適で、ついニコニコしてしまいます。

    一方で、常に水濡れに注意しないといけないのは、あまり革靴を履かない身としてはけっこう大変でした。防水スプレーやレインカバーである程度はフォローできますが、それでも気をつかいます。

    あと、足は痛めませんでしたが、靴ずれには悩みました。特に履きはじめのころは大変だった……。このあたりは使っているうちに馴染んでくるので、あまり心配ないと思いますけど、下ろしたての時期は注意しておいたほうがいいと思います。

    うん、2ヶ月使ってみて、気になったところはこれぐらいですね。

    真夏のピークも去って、そろそろ秋がやってきます。もうすこし涼しくなったら、旅行やアウトドアに精を出そうとあれこれ計画を立てています。

    靴選びの大切さ、靴を育てていくことの楽しさ、そのほか色々なことを教えてくれたmikeyに、色々な景色を見せてあげたいなと考えています。あちこち歩き回ると思うけど、これからもひとつよろしくね。 

     

    photographer:野口羊(Yo Noguchi)twitter:@ktzgw

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