ブルーオーバー靴下開発録
ブルーオーバーの旗艦店であるストラクトでは、奈良の靴下ブランド<ニシグチクツシタ>の履く人思いの靴下が大人気。店頭でスニーカーをお選びいただいたお客さまに、「この靴にはどんな靴下が合いますか?」とご質問いただくことも相当な頻度です。
靴を買う時に、靴下も合わせて買う。これって、すごく自然なことなのですが、ことブルーオーバーの靴と合わせる靴下に限っては、少しだけその重要度が上がるのかも…と、わたしは思い至りました。
今回、ブルーオーバーオリジナル靴下<b_OFFICIAL COTTON RIB SOX>開発の一部始終をスタッフ江川がしたためます。ブルーオーバーのイメージをほんの少し裏切って、カジュアルでカラフルな靴下が生まれた裏側とは?
靴下開発にいたるまで
冒頭で、「ブルーオーバーの靴と合わせる靴下に限っては、少しだけその重要度が上がるのかも」と書きました。何故わたしがそう考えたかというと、ブルーオーバーのスニーカーは類を見ないくらいにシンプル。それはつまり、合わせる靴下によって、ガラリと印象が変わるということになります。
更にいうと、ブルーオーバーの代名詞とも言えるモデル”マイキー”は、発色の良いベロアを一枚革で用いているのが魅力の一つですし、”ショーティ”や”コポリ”にも、デザインがシンプルだからこその大きな面積で、配色が施されています。
普段クロ、シロ、茶の靴をよく履いている方には、色味がはっきりした靴を履くこと自体がちょっとした冒険とも言えるかもしれませんし、合わせる靴下や服の選択肢も変わってくるのではないでしょうか。
ここで少し個人的な話しをすると、わたしがブルーオーバーの靴と合わせる靴下は基本的にいつもコットンの白でした。それこそ<ニシグチクツシタ>さんのエジプトコットンリブソックスは靴のデザインを邪魔しませんし、しっかり厚みもあります。超長綿を使っているからか、綿の風合い豊かでブルーオーバーのレザーとも相性抜群。履き心地も最高です。正直、ブルーオーバーと合わせるならこれ以上の正解はないのでは?と思うほど。
ブルーオーバーには、上質でプレーンな靴下を合わせるのが至上。という暗黙の了解があったからこそ、これまでオリジナルソックスは販売してきませんでした。
そう。上のコメントからも分かる通り、暗黙の了解に反してブルーオーバーのデザイナー渡利はカラフルな靴下を履いていることが多いんです。シンプルなブルーオーバーには合わないんじゃ?と敬遠しそうな靴下なのですが、実際はその、カジュアルで、カラフルで、少しスポーティな靴下が、妙にブルーオーバーのスニーカーにマッチしていて良い感じ。
意外と、「シンプルなブルーオーバーにはプレーンな靴下を合わせるに限る」というわけでも無いらしい! ブルーオーバーをデザインする渡利ならではの靴下の組み合わせによって、ブルーオーバーの新たな一面を感じた瞬間でした。
渡利のスタイリングにならって、ブルーオーバーと組み合わせるのが楽しくなる靴下をブルーオーバーユーザーに提案したい。
<上質だけど少しカジュアルかつカラフルで、ブルーオーバーにしっくりくる靴下>の開発がスタートが決定しました。
まあ派手っていってもグラフィック全開ってなことでなくてですね。色の組み合わせで遊びたいんです!あと履き心地もええやつが欲しいな(渡利)
西口さんに相談だ!
そうと決まれば、7周年の記念にノベルティとして靴下を作ってもらったこともある、ニットウィン(ニシグチクツシタ)の西口さんに相談! そしてとんとん拍子に打ち合わせへ。
ブルーオーバーからの要望
・全体的にカジュアルかつ少しだけスポーティな雰囲気にしたい
・履き心地はエジプトコットンリブソックスが理想
・無地ではなく何かワンポイント入れたい
・足を組んだ時に肌が見えない長さにしたい
何しろこちらは靴下に関しては素人。最初に伝えたのはこんなざっくりとした要望でしたが、靴下の専門家である西口さんと相談するうちに、少しずつサンプルを作るための具体的な仕様が固まっていきました。
7周年記念ソックスではマイキーの横顔の刺繍を入れましたが、今回は編地を変えてワンポイントのアクセントにして、少しオールドっぽい雰囲気にしたかったんです。あと靴下の長さ。これ大事ですよね。怪しげなふくらはぎが見えないようにしたい。なので、ほんのちょっとだけ長めに作っていただくことにしました(渡利)
ファーストサンプルの到着
打ち合わせから少しして、西口さんからファーストサンプルが届きました。思っていたよりも少しbマークが平たくなっていますが、そこは最終的に調整するとして。一番大事なのは履き心地やサイズ感。ブランドメンバーそれぞれが実際に履いて試してみました。
さすがは西口さん。わたしの個人的な感想としては、きめ細かくてすごく好きな履き心地と肌当たり。パンツを履いた時にチラッとbマークが見えるくらいの丈感も良い感じです。
しかし、足のサイズや身長が違う渡利が履くと、編地が伸びてしまってちょっと透け感が気になる。全体的な雰囲気も、今回の開発主旨と照らし合わせると、カジュアルさやスポーティさがもう少し欲しい。
足裏やつま先に入ったパイルは、履き心地最高なんだけど。履いた時の編み目の透け感がすこし気になるなぁ。履いてももうすこし編み目が広がらなくて、それでいて”ふわっ”としてるような。なんともワガママ仕様に持っていきたい。けど、西口さんにおこられるかな…。製品開発はファーストサンプルの調整からが大変なのはいつものこと!(渡利)
理想のブルーオーバーソックスに近づけるために、どこをどう調整するべきか?西口さんと相談している内に、どうやら編地の大きさがカギになりそうなことが分かってきたのですが…。
ファーストサンプルからセカンドサンプルへ
ファーストサンプルを実際に履いて試して気付いたことは、以下の通り。
ファーストサンプルでの気付き
・男性が履くと生地が伸びて、薄くなっているように見える
・リブが細かったりと、理想とするカジュアルな雰囲気が足りない
西口さんにこの2点を伝えると、どうやら原因は「ゲージ」にあることが分かりました。ゲージとは、編み目の大きさのことなのですが、確かに最初の打ち合わせでは、こちらから特にゲージについて要望していません。この編み目の大きさことゲージを大きくすれば、カジュアルな雰囲気が出てくる。と、同時に使う糸の量が変わって値段が高くなってしまうとのこと…。
ここで、値段が高くなるならイメージとは違うけどゲージは今のままで妥協しよう…という訳には、勿論いきません。多少贅沢仕様になろうとも、セカンドサンプルではゲージを大きくしてもらうことにしました。
ローゲージにすることで、ふんわりしてカジュアルな感がでればいいけどねー(渡利)
ゲージを調整したセカンドサンプルが到着
おお~!これは確かに。ゲージ一つ変わるだけで、ファーストサンプルとは明らかに雰囲気が異なります。きめ細かいハイゲージのファーストサンプルに比べて、セカンドサンプルはふんわりとしたローゲージ。カジュアルな雰囲気が出てきました!
ファーストサンプルでは履いた際に伸びて透けてしまっていた部分も、ローゲージだと気にならなくなっています。ちなみに、西口さんの機転で足裏のスポンジ部分が少し伸びているのも、ディテールではありますが、見た目と履き心地に大きな影響を与えています。
ゲージを調整したら、一気に理想の雰囲気に近づいてきたわ!
あとは肝心の糸色を選んで、最後にマークと丈の長さの調整やな。ローゲージにしたことで、期せずしてマークが大きくなってしまったけど、これくらい大きい方が良いかも(渡利)
カラフルな糸の見本帳。この中から5色選んで、最終サンプルで確認することに。マイキーの定番カラーと突き合わせて、しっくりくる糸色を選びました。
最終サンプルでの要望
・マークの横サイズはそのままに、比率を調整する
・丈を長くする
・カラー展開の確認
ついに、最終サンプルが到着
マークの比率、カラー展開、そして質感まで。どこをとっても申し分ない最終サンプルが到着しました!
ブラックとホワイトは使いやすさを重視しながらも、ブラックには蛍光の青、ホワイトにはネイビーのbマークを入れて、ワンポイントにしています。
カーキ、オレンジ、イエローはスタイリングの差し色にぴったりの、ハッとする配色です。
ちなみに、サイズ展開は23~25cmと、25cm~27cmの2サイズあります。
サンプルを並べてみると、少しずつ仕様が変化していることが分かります。最終サンプルでは、bマークのデザインも調整しました。
実際にマイキーと合わせてみても、当初のコンセプト通りブルーオーバーの新たな一面が垣間見える出来栄えになりました。
私、オレンジとイエローがお気に入り!マイキーとの組み合わせが本当にバッチシです!靴下の履き心地も最高で、夏でも全然履けます。ここまで快適なのはびっくり!ブルーオーバーの靴のシンプルさと素材感に、この靴下は本当に合わせやすいですねー(渡利)
今回靴下の開発に携わってみて、ゲージ一つ変えるだけでこんなに印象が変わるのかと驚きました。ニットの世界を流石の手腕でアテンドしていただいた西口さんに感謝です。
わたしも先行してサンプルのオリーブを履いているのですが、足裏のスポンジがふわっとしながらもしっかりと支えてくれて、とても気持ちのいい履き心地。他のスタッフがイエローを履いていているのを見ると、合わせやすそうだし可愛い! 次はイエローを狙っています。
ブルーオーバーファンの皆さんにも、是非この<b_OFFICIAL COTTON RIB SOX>とブルーオーバーの組み合わせを楽しんでいただけたらと思います。