靴を作る話
デザイナーの渡利です。靴ってどんな流れで出来上がるのか、あんまり知る人は少ないのではないでしょうか。そこで今日は、blueoverを作る工程を簡単に説明をしてみました。お気軽に読んでいただければと思います。
はじめに
靴は分業制で作られています。革を扱うタンナーや革問屋。生地を扱う生地問屋、ゴムやウレタンなどを焼いて形作る加工所、紐や見えない箇所の副資材をあつかう業者、それらを靴のパーツに加工する工場、木型や抜き型など生産のための型を作るところ、裁断所、縫製場、製靴工場…靴をつくるために実に多くの小さな工場が連携していきます。そんな靴を作る過程の話です。
下の図は靴を作る時、連携する業者です。いくつもの業者が連携しあうので誰かが「まとめ役」をする必要があります。多くの場合は靴の製造工程の最終段階である製靴工場が行うます。
blueoverはそれぞれの工場と直接交渉して「まとめ役」として位置しています。
ラスト
ラストという言葉があります。木型とも呼ばれます。これは樹脂製(昔は木材)の人の足を形どったものです。靴を作るには必須の道具ですが、完成時にはその姿は見えません。ラストは縫製した靴のパーツ(アッパーといいます)をラストに巻き付けて、アッパーを靴として形作るとても重要なパーツです。ラストの形状によって、完成した時の見た目や、足入れ感が大きく変わります。靴づくりにおいて最も重要な道具でもあります。デザイナーはこの木型をベースにどんな靴をつくろうか想像していきます。
素材
靴の見栄えを大きく左右する部分が材料選定。革、合繊、帆布などがあり、さらにそこにも様々な種類や仕上げによって表情が大きく変わります。
革だったら、クロムレザーやタンニンレザー、混合鞣しといった「鞣し」の種類があって、そこから、革の表面を同加工するか。お化粧のようなイメージですね。染色や顔料仕上げ、素上げ、クリア、ガラスなどなど。本当にきりがないくらいおおくの革の種類、仕上げがあります。
合繊とは、ナイロンやポリエステル、革に似せた合成皮革、人工皮革などでしょうか。物性はとても強く、防水性能などの機能が盛り込まれています。革と違い表面が均一なので無駄なく使うことができるのもよい点です。
帆布は合繊のように均一な生地で、素材が綿が使われています。日本でも古くから使われている素材で使い込むほどに風合いが生まれるのも特徴です。物性は合繊に比べて劣る場合もありますが、味わい深い素材で人気があります。
下の写真はmikeyの外装で使っているベロア。革からとれる「トコ」と呼ばれる部位を使って靴に仕上げています。それを染料で染め、表面はすっぴんの素上げです。この材料は一般的なトコベロアに比べて厚口のモノを使っていますが、最近この厚口のものが少なくなってきているんです。
型紙~抜型
副資材
靴に使われる副資材。紐やインソールは目にするけど、つま先や踵に仕込まれる芯材。履き口のスポンジ、伸び止めテープ、接着のり、補強材など、目に見えない部分にもいろんな材料が使われています。あまりにも多く種類がるので、副資材屋さんという副資材を取りまとめた問屋さんがあるんです。
これはつま先、かかとに仕込まれている芯材。熱で柔らかくなる素材で作られています。
これはインソールの帆布。ロール状の生地に繰り返しパターンをシルク印刷しています。
靴の中に仕込まれているスポンジ。ベロや履き口に使われています。
これらはミシン糸。ブルーオーバーは主に20番手の糸を使っています。
アッパー
さて、次はアッパーを完成していく過程です。
まずは抜型を使って、クリッカーという裁断機を使って革を裁断していきます。
各パーツを裁断した後、中にしこむ副資材の下処理をしていきます。意外とこれが手間のかかる工程なんです。
そしてそれらを縫製職人さんに渡して縫製を依頼します。
完成したアッパー。
ソール(加工底)
次は地面と足とのクッションの役割を担うのがソールを作る工程です。
僕たちのソールは加工底と言って、クッション機能を持つEVAと呼ばれる材料と、グリップや摩擦につよいラバーを張り合わせたものを採用しています。この製法は神戸長田では昔から作り続けられています。
ゴム屋さんから仕入れたシート状のEVA、ラバーを抜型をつかって裁断機で抜いていきます。
それぞれ抜いたEVAとラバーを張り合わせます。
張り合わせたものを、グラインダーで各所をやすり、きれいに仕上げていきます。
完成した加工底ユニット。白い部分がクッションの機能を持つEVA、黒い部分が地面に当たるラバー、グリップ性や耐摩耗性が求められる。
つり込み
アッパーとソールが完成すれば、次は完成に向けてです。
まずはつま先とかかとをより立体的にするため、熱と蒸気で癖付けをおこないます。
癖付けが終わると、「つり込み」と呼ばれるラストにアッパーを沿わせる作業を行います。複雑なマシンの制御は職人による技術が必要とされます。そうしてラストに革が釣り込まれた状態が出来上がります。
釣り込んだあと、すぐにラストを抜かず、一日程度時間を掛けてしっかりとラストにアッパーをなじませます。そうでないと、靴が完成してラストを抜いたら、形がいびつになってしまうからです。
底付け(セメンテッド)
アッパーとソールの間に接着剤を付け圧着機でしっかりと張り合わせます(セメンテッド製法。マッケイやグッドイヤーは別の方法)。
写真はソールを張り合わせた直後の状態。ここからラストを抜き、靴ひもを通し、インソールを敷いて、汚れを取って箱に詰めてようやく靴が完成します。
おわりに
やはり靴というのは各工程が、様々な場所をわたり歩いて生まれていく珍しい商品だなと思います。
まだまだ伝えたいことはありますが、日本でこうして靴が作られているということを知っていただけたら嬉しい限りです。
この先こうした技術が残るのは少なくなると思われます。だけど僕たちがこして靴を作り続けることで、その間につなぎとめる機会を得れるかもしれません。
昔の当たり前が、これからは当たり前でなくなる。
そんなことが増えていくように思えます、時代の流れと言えばそれまでですが、ブランドとしてできることを続けていこうと思っています。
小さなブランドですが、これからも応援よろしくお願いいたします!
↑コロナ禍でも元気にblueoverを支えいただいている地域の職人さん。この人たちのおかげで、ブルーオーバーは続けられています。