マイキーラスト解剖
今回はシューズブランドのフィッティングの核である「ラスト」について解説いたします。blueoverの購入を検討されている方、よりblueoverのラストについて詳しく知りたい方は一読ください。
ラストとは
ラスト(LAST)というのは靴を作るうえで、アッパーを巻き付けて形づける、型のようなものです。昔は木製でしたが、今は樹脂製、アルミ製がほとんどです。靴の専業メーカーであればブランドのオリジナルラストを作りますが、OEMなどで靴を作る場合は工場が所有しているラストを流用しているのではないでしょうか。ちなみにblueoverのラストは職人と作り上げたオリジナルラストです。
さて、ラストは靴における非常に重要な部分です。ラストが合わないと、どんなに良い見た目の靴でも履いたら痛くて歩けなかったりします。足の形は人それぞれで、欧米人と日本人でも当然異なりますし、日本人も様々な足の形があるのが当たりまえです。そしてブランドはどんな人に履いてほしいかによってラストの形状が決まります。いわばブランドの骨格ともいえる大切な存在なんです。
blueoverは日本人の足に向けてラスト(mikey last)を設計しました。
mikey lastはblueoverにおいて多くのモデルが採用しているので、これを読んでいただければblueoverの靴のフィッティングについてわかるようになると思います。そして今後の靴の購入の参考にしていただければ幸いです。
そこでラストから見える、blueoverの靴に込められた考えをそれぞれ見ていこうと思います。
①足長
足長はいわゆる足の「かかと~つま先」までの長さを指します。
ですがすこし補足したいと思います。
一般的に足長=靴のサイズ表記とみられる方が多く、その捉え方が間違いを起こします。靴には「捨て寸」と呼ばれるつま先に隙間を設けることがあります。革靴ではシルエットといった見た目の部分で使われることがありますが、機能的側面では履いた時に足の指を動かしやすくすることで、踏ん張りがきいたり、疲れにくくする為でもあります。例えば表記サイズ27.5cmと書いている靴サイズであってもラスト足長を測ってみると280mm、285mmだったりします。この数値は各社によって考え方が異なるので、明確なことは言えません。
blueoverのmikey lastは捨て寸を取り入れています。靴サイズに対しておよそ13mmの隙間を設けています。つまり<26.5cmサイズ>の靴の場合、278mmの足長ということです。普段26.5cm、27.0cmを履かれるお客さまに快適に履いていただける最適値になります。(他社サンプルと測定すると、捨て寸5~10mmが一般的でした)
②足囲(ワイズ)
ワイズ(width)です。ワイズは「親指の付け根から小指の付け根」の周囲をぐるっと測った長さ(足囲)をA~Gで表した値になります。基本的にはAほど細く、Gが太いということになります。一般的なワイズはDやEとなります(詳細はこちらのページ)。mikey lastは<ワイズE>となります。
一般的には日本人の足の形は「幅広、甲高」と呼ばれていますが。これまで私たちがお客様の足をみている限り、幅広の傾向ではありますが甲に関しては甲高とは言えず、一般的な高さではないかと考えています。そこからblueoverのラストはD~Eの範囲でワイズを設計しています。
このワイズ(足囲)で履き心地のきつさ、緩さを図る方が多いと思いますが、この数値だけではとらえきれない部分があります。mikey lastはワイズEですが実際は少しタイトに感じるかもしれません。その理由は次の「足幅」と連動する為です。
③足幅(底面ゲージ)
先にも少し書きましたが、実際お客様の足を見てきた上で、日本人の甲は高いとは言えず、足幅に関しては広いように思います。
じつはこの足幅の設計が、mikey lastの特徴となります。
足幅とは「親指のつけ根のでっぱっている所と小指のつけ根にあるでっぱっている所の直線の幅」をさします。よくNIKEは細いとか言われ、ASICSは履きやすいとか言われているのを耳にしますが、実際底面ゲージを図ってしらべることはないかと思います。 そこで今回我々は他社と自社の靴の足幅と比較するため、スニーカーを分解して底面ゲージを抽出してみました(沢山分解したのですが、すべて掲載すると煩雑になるので、いくつかをピックしました)。そうするとこれまで見えていなかった違いが見えてきました。
※底面ゲージ:ラストを裏から見た時に見えるシルエット。つま先の形状や足幅、踵のラインがわかる。靴の完成品からは見ることはできない。
足長をそろえながらの比較。mikey lastの前足部(外足~小指付根~つま先~母指球)がゆったりとしたラインを描いているのがわかります。
そしてワイズで伝えた甲が少しタイトになるということは、この幅が広いことが原因になります。ワイズの数値は足囲で決まるため、足幅が狭く甲高の靴と、足幅が広く甲低の靴のワイズは同じにものになってしまうということです。つまりこのmikey lastは甲は一般的なワイズEの靴よりもタイトに感じられるだろうということです。ただし足の形状は外圧によって変化するので、足囲値が同じであれば同じ履き心地だという考えもあるかもしれません、しかし私たちは足が自然な状態での装着を求めているので、日本人に合った自然な形状を目指しています。
④足先(トップライン)
足先の形状は日本人に多いとされているエジプト型に合わせた、ラウンドトゥとなっています。このラインは比較的他のスニーカーと同じような形状になっています。足幅に引っ張られ、緩やかではありますが一般的なつま先形状と言ってよいかと思います。
ここでラストの仕様を確認してみます。
【mikey last 詳細】
靴サイズ26.5cmの場合
足囲(ワイズ)252mm [E]
足長 278mm (捨て寸 13mm)
足幅 ワイド
足先 ラウンドトゥ
こうして数値でみると、mikey lastはワイズE(一般的)でありながら足幅がワイドな設計であることがわかりました。そしてワイズは足囲で決まるので幅と甲の高低の関係性は必ずしも連動しない為、甲が少し低めということになります。
これはblueoverの靴が日本人の足の特徴とされる「幅広」であることと、「甲」は決して甲高ではないと考えた結果と言えます。加えて激しい運動をするためのではなく、あくまで「立位と歩行」に対して考えて長時間の着用でも疲れない靴を作るよう、甲より先はゆったりとすること、しかし甲はしっかりとホールドするという考えが込められています。
ちなみに私自身は、NBで27.0~27.5cm、NIKEで27.5~28.0cmあたりを常に履いていますが、blueoverで行くと26.5cmでジャストサイズです。おそらくこれは足幅で合わせて履いていたため実際の足長より大きくなっていたと言えます。足の測定器ではかると26.5cmでした。
今回、自社のラストをより詳しく知る為、多くの他社サンプルを調査、比較しました。blueoverは決して派手さのある靴ではありませんが、見えないところまで設計された靴であることが皆様に伝われば幸いです。今後もよりよい靴を作り上げていきたいと思っています。もし足入れに関して気になること、改善点があればお気軽にお問合せ、ご指摘ください。
どうぞこれからもblueoverをよろしくお願いいたします。