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カートが空です

ピッグスキンで靴をつくって気付いたこと。

新登場のマイキースエードは、牛ベロアではなくピッグスエードをアッパーに配置しています。

これまでも、ブルーオーバーはライニングにピッグスキンを用いてきましたが、アッパーにピッグを選ぶのは初めての事。今回はタイトル通り、ピッグスキンで靴ができあがるのを間近に見て、わたしが気付いたことを開発記として記します。

地の文は江川、一言コメントは靴職人の東さんです。


ピッグスエードは、本当に軽いのか。

マイキースエード:ダークグレー

今回マイキースエードのアッパーに採用したピッグスエードとはつまり、豚の革のこと。

ピッグスエードには、薄くても丈夫というメリットがあります。

そこで実際に、ブルーオーバーの他のモデルと重さを比較してみることに。マイキースエードは、本当に軽いのでしょうか。

まずは多くのお客様から、「軽い」とお声をいただく定番マイキーを計測して比較対象にします。

計量の結果、定番マイキーの26.5cm片足の重さは294gでした。

スニーカーの多くは300gから500gなので、300gをきっているマイキーはそもそもかなり軽い部類と言えます。

この軽さの秘密のひとつには、製法にセメンテッドを採用していることが挙げられます。

左、セメンテッド製法を採用。右はアッパーにアイナカをマッケイ縫いで取り付け、ソールユニットを接着している。

この図を見ると、アッパーにソールユニットを接着剤ではりつけたセメンテッド製法は、他の製法に比べて部品が少ない。つまり、軽くなりやすいことが分かりますね。

さて、お次は同サイズのマイキースエードをはかります。

軽い! なんと定番マイキーと比較して、マイキースエードは20g近く軽い276gでした。

レザースニーカーに対して重いというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、特にマイキースエードは軽いと言えます。

この後、目をつむって定番マイキーとマイキースエードを片足ずつ手に持って比べてみましたが、100発100中で軽い方、つまりマイキースエードを当てることができました(笑)

薄くて丈夫なピッグスキン。定番マイキーのように『しっかり感』も出したかったので、今回は靴製造時に使われる裏材を革の裏全面に貼っています。
それでもこんなに軽いとは!

ピッグスエードとベロア、見た目の違い

さて、ピッグスエードを用いているマイキースエードと、ベロアを用いている定番マイキーの重さの違いはお気づきいただけたかと思います。

次は見た目、質感、色の出方の違いについて。

手前から、マイキースエード:キャメル、定番マイキー:キャメル
左から、定番マイキー:ブラック、マイキースエード:ダークグレー、定番マイキー:トープ
手前から、定番マイキー:ダークネイビー、ネイビー、マイキースエード:ネイビー

ご覧の通り、定番マイキーはしっかりと毛足があるのに対し、マイキースエードは毛足が短いので、少し上品な感じがします。

また、ベロアは均等な色味であるのに対し、特徴的な毛穴の影響もありピッグスエードは履きなじんだデニムのような色の濃淡が見られます。

ちなみに、マイキースエードの靴ヒモはピッグスエードの雰囲気に合わせてレザーと同色の丸紐になっています。

革表面の細かな凹凸と毛穴模様のあるピッグスキンは、牛革よりも革本来の表情が豊かといってもいいかもしれません

ピッグスエードは、日本人が食べた豚からできている!

マイキースエードのキャメル

レザーは基本的にどれもそうですが、食用の家畜の皮からできています。

生活の中では、じっくりそのことに向き合うことは少ないと思います。なので、自分が口に入れるお肉とレザー製品の元は同じで、レザーがいただいた命を余すことなく使った素材だということ。

改めて認識すると少し驚きますね。

特に豚の皮(あるいは肉)は、日本国内の自給率がとても高いです。
「輸入」という環境への負荷がない。つまりカーボンフットプリントが少なく、日本人にとってある意味ではエコな素材だということ。

勿論、今回マイキースエードに使っているピッグスエード、その原皮も日本のものです。

クロム鞣しのピッグスキンをサンドペーパーでこすり起毛加工し、オイルを含ませました。とても柔らかい手触りで、使っていくと高級感のあるツヤがでてきます!

ピッグスキンは、高級レザー

マイキースエードのネイビー

ところで、日本国内ではレザーといえば牛というイメージがあるのではないでしょうか。なんとなく、豚より牛の方がグレードが高い印象を受けますよね。

ですが、海外からすると日本のピッグスキンは高級レザー。高品質という評価を得ているピッグスキンは、東京の特産品の一つにも数えられています。

実際、ピッグスキンの特徴の一つである毛穴の影響で通気性がいい上、牛革よりも軽くて摩擦にも強い。メリットの多い素材と言えるのではないでしょうか。

ピッグスキンの特徴からくる革の表情の豊かさも、海外ブランドがピッグスキンを採用している理由の1つでしょうね。
個人的にはベロアを採用している定番マイキーよりも、マイキースエードの方が大人っぽい印象を受けます

マイキースエードは地産地消な一足

ブルーオーバーは元々、日本のタンナーさんと一緒に革をつくったり、買わせてもらったりしています。靴ヒモも日本製ですし、パーツも出来得る限り日本のものを使い、製靴自体も日本で行っている日本製の靴です。

マイキースエードは更に、アッパーに使うレザーの原皮まで日本製。正に地産地消と呼べる一足に仕上がりました。

定番マイキーとマイキースエードを合わせて、マイキーは今現在全8色。選び応えのある色展開になっています。

デザインやカラー、機能を気に入ってブルーオーバーを手に取ってくれた人が、もしかしたら知らず知らずのうちに日本の靴作りに貢献していたり、環境に負荷が少ないアイテムを選んでいる。

そういう取り組みって、すごく粋だな。手前味噌ですが、そんなことに気付いたピッグスキンでの靴作りでした。

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