Shoemakingのスタートによせて。
2021年は、ブルーオーバーの10周年アニバーサリーイヤー。10周年を記念して、いくつかの企画が進行中です。
その内の1つが、「クツヲツクル」を紹介するコンテンツ、”Shoemaking-シューメイキング”。
今回は、このコンテンツに着手するに至った理由や、ブルーオーバーの生産背景、そして新しいコンテンツを通して本当に伝えたいことはなんなのか。
デザイナーの渡利にインタビューしました。聞き手はスタッフの江川です。
江川
先日公開した製靴(せいか)紹介コンテンツ”シューメイキング”について、お話しを聞きます。 よろしくお願いします
渡利
おねがいします!
江川
コンテンツを作るにあたって思ったんですけど、他のスニーカーサイトでこうした靴作り(製靴という)を紹介するようなものはあんまりないですよね
渡利
ですね。僕らがやってきたブルーオーバーというブランドも10年近く経とうとしてるけど、色々あって、考えて。
改めて今、何をすべきなのかって
江川
10周年というのは、見つめなおすにはうってつけのタイミングですね
渡利
そうなんですよ
江川
国内で靴を作って販売するっていうのも大事だけど。そもそも、靴作りっていうモノヅクリをもう少し具体的に説明してアーカイブしていこうという考えで、まずは製靴道具を紹介しようと。
今、様々な情報が溢れかえっていて、すぐにでも知りたいことが手に入るじゃないですか?
渡利
たしかに検索さえすれば、大抵のことは出てきます
江川
でも意外と靴を作るという工程にフォーカスして説明してくれるサイトってないよねって。 で、靴に興味を持た人達がこのサイトを通じて持ってる靴に愛着をもったり、クツヅクリに興味をもったり、携わったりしてもらえたらなぁと思ったので。やってみようとなりました
江川
なるほど。
ブルーオーバーのファンに向けたサービスでもあり、靴を作ることに興味がある人への道しるべにもしたいということでしょうか?
渡利
うーん。僕らのファンにむけてというのもあるけど、もっと広くに向けたイメージでもあるなぁ。
まぁ、はじめは自分達の身近に関係する内容から始まるんですが、ゆくゆくは僕らが用いてる以外の製法なんかも紹介しようとおもってます
江川
というと、バルカナイズドみたいな?
渡利
それも一つですね。
そういう色んな入口から、靴に興味を持ったヒトがここに来て、いろいろ知って、例えば「作ってみたい!」って思ったりとか。そういうきっかけにでもなれば嬉しいよね
江川
ブランドに関わらず、靴作りの門戸を広げよう!ということなんでしょうか。
思えば今、ストラクトの店頭の一部がサンプルをつくるための小さな靴工場になっていますよね
渡利
そうですね、去年の暮れくらいからかな
江川
お客様にも見える形で物作りするということは、今回の製靴道具の特集コンテンツと通じるところがありそうですね
渡利
たしかにそうですね。
ストラクトにサンプル作りの場所を移したのは、引っ越しで事務所にそのスペースがなくなったっていうのもあるけど(笑)
江川
そうでしたね(笑)
渡利
でも、カウンター奥にサンプルを作っているアトリエがあるのって、まさに今「起きていること」っていう感じでいいじゃんみたいな。
そんな感覚はありますよ。実際、まだ先にお披露目するサンプルがころがってたりしますしね
江川
そういえば、わたしがブルーオーバーのブランドに加わって、最初に感じた驚きは、東さんがスニーカーのサンプルを手作りしてたことでした。
スニーカーって、工場で大量生産されてるイメージがあるから「手作りできるの物なの!?」ってビックリして
渡利
ちなみに、どうやってできると思ってたの?
江川
当時のわたしの頭の中のイメージでは、テレビ番組で見たような…
例えばマヨネーズとか缶詰なんかの、ラインの上をどんどん半製品が流れて行って、あっという間に完成してる、あのイメージでしたね
渡利
靴がマヨネーズや缶詰と同じ!!!
でっかいマシンのアームが動いて、ヒトがいなくてもパカパカ出来上がるイメージだったってわけね?
江川
思い返すとおかしいんですけど、そうです(笑)
学生時代に行った工場見学しかり、テレビ番組しかり、そこから得たすごくオートマティックなイメージしか持ってなかったですね
渡利
なるほどー
江川
だからこそ、東さんがサンプルを手作りしてるのを見てびっくりしたんですよね…この驚きをストラクトの店頭で、お客さんに感じてもらえる。アトリエがストラクトに併設されてるのはとてもいいなと思ってます
アズマ:ブルーオーバーのブランドメンバーであり、靴職人。渡利のデザインを基にストラクト併設のアトリエで靴のファーストサンプルを作る。今回紹介している製靴道具は東が実際に用いている道具
江川
しかも実際のところ、わたしの最初の予想に反して、靴作りの工場ってすごくアナログですしね
渡利
一括りに靴作りっていっても、色々あるからね。
メガブランドの工場なんかはそれこそ機械的にも思えるはず。 成型のソールやニット技術のアッパーなんか、まさにハイテクだよね。
我がブランドはまさに”アナローグ”ど真ん中です。 アッパーもソールもアナローグです
江川
ここでちょっと難解なのが、ストラクトの店頭にあるアトリエでつくってるサンプルは手作りにほど近くても、ブルーオーバーを量産してもらってる工場で行われる作業はハンドクラフトほどの「手作り」ではないってことでしょうか
渡利
そうですね。
アナログと言っても、工場では効率的に一定の数をつくるために、全部手作業で行っているわけではないよね。
たしかにそのニュアンスは伝えたいから、ゆくゆくは工場の機械についても特集したいと思ってる
江川
実情、手作りか機械が作ってるかは、グラデーションっていうか…
渡利
うん。全自動のオートメーションではなく、人が機械を操縦するって場合もあるし。
1:全部機械でつくる
2:人が機械をつかってつくる
3:機械を使わずつくる(手作業)
この3段階で言うと、ブルーオーバーは2つめの、「人が機械をつかってつくる」ですね
江川
ですよね
渡利
ミシンを機械にカウントすると、縫製品は全部手作業のものなんて国内ではあまりないんじゃないかな。
道具をつかう、機械をつかう。いずれも人が操ってるのには違いないにせよね
江川
人が作ってるってことは忘れちゃいけないですよね。
大量生産されたものって、いつまでもいくつも替えがある、「永遠」みたいに錯覚しちゃうこともあって。
ブルーオーバーは特にそういう性質とはかけ離れてるので、お客様に説明するときにはその辺りのディテールは、しっかり伝わるように意識してました
渡利
そうだよね。僕らのモノにはすぐそばに「つくる人」がいる。
つくる人には勿論永遠も替えもなくて、時間は有限だし一人一人毎日の生活がある。
その中で靴が出来上がっている。
でもなかなか、出来上がったモノだけ見るとわかりにくいよね
江川
作ってる途中のことは普通ブラックボックスですもんね。
今回、まずは道具を紹介することで、WEB上でブルーオーバーと出会う人にも、道具の先にあるような作る過程だったり、かかる時間だったりを想像してもらって、本来的なモノの価値を感じてもらえたらいいですね
渡利
そういうことを知ってもらうことで、モノとの付き合い方がポジティブに、豊かになるといいよね
“シューメイキング”のコンテンツページへは上の画像から。
また、靴作りについて知りたいことや疑問がある方はコンタクトからお便りください!