パ音インタビュー
結成の経緯

10年以上前(2013~2014年頃)の大学時代に遡る、グループ結成の裏話が語られました。
- 出会いはポップスバンド
共通の知人から「バンドをやりたいから来てほしい」と声をかけられ、西山氏がギター、柴田氏がキーボードとしてスタジオに呼び出されたのが二人の出会い。しかし、大人数での曲作りに難しさを感じ、そのバンドからは自然と離脱することになります。
- 電子音楽とDTMへの移行
その後、友人として交流を深める中で、柴田氏から「電子音楽が面白い、打ち込みで曲を作ってみよう」という提案があり、梅田のソフマップ(クリエイターズランド)へ二人でお金を握りしめて安い機材を買いに行きました。 - 「パソコン音楽クラブ」の誕生
それぞれが自宅で制作した曲を聴かせ合うため、音声共有サービス「SoundCloud(サウンドクラウ
ド)」にアップロードすることに。その際、アカウント名が必要になり、自然な流れで付けた名前が「パソコン音楽クラブ」でした。 - Maltine Records(マルチネ・レコーズ)との出会
当初は「世界を獲ろう」といった大志はなく、純粋な趣味の共有でした。当時のネットレーベル「マルチネ」自体も趣味性の最高峰というイメージであり、「そこに自分たちの音源を出せたら面白い」というサークル感覚で音源を送ったところ、「Melt Toke(ミルクトーク)」の前身ユニットのリミックスを依頼され、活動が本格化していきました。
録音・編集と物の力
10年以上のキャリアを経ても変わらない、二人のクリエイティブの核について
西山氏の一貫した「宅録と編集(エディット)」への愛
バンド時代、スタジオ録音にかかる費用を惜しんで「自分でマイクを立てて録音する」と始めたのが原点。コンピューターで音を作るノウハウや録音機材の知識を当時から豊富に持っていた。プレイヤーとしてギターをテクニカルに弾くことよりも、「録音したフレーズをこねくり回し、編集(ポストプロダクション)によって元の音と違うレベルに変化させること」に現在も強い感動を覚える。
柴田氏のヤフオクやメルカリから得る「創作のインスピレーション」
常にヤフオクを見ており、アルゴリズムの寄り道で出会う「訳のわからない古い雑誌、CD、雑貨」などに惹かれる。古い雑誌の濃い情報や、誰かが使っていたものにロマンを感じ、それが曲作りの着想(モチ
ーフ)になる。
西山氏いわく、柴田氏は「物の持つオーラや力」を敏感に察知するタイプ。音楽における音選びでも、一般的な感覚とは少し違う「個性的な浮いているもの」を見出す独自の視点(作家性)を持っています。
創作論の余談:メルカリに見る生活のストーリー
西山氏もメルカリで一般の人が作ったハンドメイドのクッションカバー(2000円)を購入した際、大量生産の世の中において「出品者の背景にある生活のストーリーや直筆の手紙に深い価値を感じた」と語り、柴田氏が持つ「モノの背景にあるドラマに惹かれる感覚」に深く共感していました。
音楽的影響とキャリア10年
初期の活動に影響を与えた音楽や、関西の音楽シーンについて振り返りました。
電気グルーヴ: 友達同士で始めた2人組という環境や、初期のロックっぽさからテクノまでジャンルを横断していくワクワク感に影響を受けた。
関西のオーガナイザー・ジーコ(DJ colaboy)氏のイベント: ブギー、インディーロック、ドリームポップなど、様々なジャンルが混ざり合うクラブイベントの中で、共通項を見つけて自分の中にマップを描いていくスタイルが大きな刺激になった。
Tycho(ティコ)やシューゲイザー: 電子音楽の質感でありながら、リバーブが深く効いたバンドミュージックっぽさのある音楽。その延長で、昔のフュージョンやシティポップを邪道な聴き方で楽しみ、フ
ァーストアルバムの楽曲制作にも反映させた。
10年というキャリア: 周りからは「10年はすごい」と言われることも増え、ルーキーとは言えない段階に入った。その中で柴田氏は「まず自分が楽しむこと、その楽しい状態をどう残すかという趣味性を維持
する意地がある」と語りました。
KURANGEとサカナクションへの敬意
11月に開催されるイベントで共演する「クランゲ」と、その母体とも言える「サカナクション」についての音楽論が展開されました。
サカナクションへのリスペクト:
同世代の音楽家として、多大な影響を受けた偉大なバンド。「ダンスミュージックとの距離感を常に考え、エレクトロニックへの接近をアイデンティティとして打ち出し続けている」「攻めたサウンドデザインと文学的で難解な歌詞でありながら、ポップでキャッチーに売れる凄み」を、音楽をやればやるほど痛感している。
クランゲ(Klange)への期待:
サカナクションのサウンドデザインやポストプロダクション、DJ的要素を担う中心人物たちのプロジェクトであるため、西山氏の「編集好き」という志向とも強く合致する。よりダイレクトにエレクトロニック
に特化した彼らの音楽と共演することで、双方に化学反応が起きることを非常に楽しみにしている。
blueoverとstructへの想い
靴づくりとメルカリ論の共通点:
blueoverの「履く人の健康や、長く履き続けられることを本気で考える国産ハンドメイド」の姿勢に、先ほどのメルカリ論(作り手の顔やストーリーが見える価値)に通じる素敵さを感じている。
イベントへの意気込み:
大阪で活動していた頃から「struct」にインディペンデントな動きで何度も呼んでもらい、そこから繋がった縁がたくさんある。今回の11月のイベントはその延長線上にある集大成として、お互いに非常に楽し
みであり、何としても成功させたいという強い熱意でインタビューが締めくくられました。



