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コンセプト深堀インタビュー#04|履いてくれる皆様へ

設立10年を迎え、ブルーオーバーはコンセプト文をアップデート。新しいコンセプト文には、ブランドの背景や物作りの考え方、そして履く人と共有したい思いを込めています。

【コンセプト全文】

2500文字以上とかなり長い文となったコンセプト。このコンテンツでは執筆したブルーオーバーのデザイナー渡利とスタッフ江川と二人でその内容を掘り下げていきます。

人物紹介

渡利(ワタリ)
ブルーオーバーの発起人であり、デザイナー。たまの趣味は木彫り。愛車は初代ホンダシティE-AA。

江川(エガワ)
ブルーオーバー / ストラクトのスタッフ。休日は手芸を楽しむ。作った物をすぐ使えると嬉しい。


#03靴に込めた想いへ

江川
前回、ブルーオーバーの歩く事に重きをおいた履き心地の設計や、長く快適に履くための素材の選定について、デザイナーである渡利さんの考えを紹介しました。
物とそれを作る人との純粋で健全な関係。そこに美しさを見いだして、靴づくりで再現しているブルーオーバー。最終回は、どんな人にブルーオーバーを届けたいと思っているのか。履いてくださる人に、何を感じて欲しいのかを、渡利さんに聞いていこうと思います

はい。お願いしますー

あたりまえで特別なくつ

ブルーオーバーは、健全な美を持つ靴を目指しています。それを履くことで、その人と靴の関係は、あたりまえでありながらもすこし特別な関係になりえます。地域社会で継承され続けた製靴産業や文化、そこに従事する人達を守り、育てることの一端を担い、自らも健全な循環の一部となることを示します。

江川
ここまで、かなりの時間を費やしてブルーオーバーのコンセプト文について話を聞いてきましたが、ハイライトの1つに選ぶとすれば、2回目に話題にした「ブルーオーバーは民藝じゃない」ってところだと思うんですよね

渡利
確かに。ブランドスタート以来10年間、ことある毎に「民藝」という言葉を使っていただけにね

江川
ただ、影響は強く受けてるんですよね。姿形じゃなく、「民藝」の成り立ちや背景の部分に

渡利
そうそう

江川
ということは、ブルーオーバーが内包している価値も、外観に現れるものだけじゃなくて、その背景込みで…なんというか、単に靴を履くというよりは、もう靴の成り立ちごと纏ってもらいたい。ということになってくるんでしょうか

渡利
そうですね。ブルーオーバーという靴とブランドを通じて、作っている人どうしのつながりや地域に根付く産業や文化を知ってもらって、応援してもらえればいいなと思ってて。過去から続いてきた物作りとその歴史は、産地の自然から影響を受けて共生してきたし、それ自体が「人の営み」だった。民藝という概念に感じる美というものは、そういう意味で人間として感覚的に心地が良いと思えるからこそ美しいのかなとも思っています

江川
最近、製品ページの一部にパーツ毎の産地を明記していますが、これはコンセプト文にある履く人 「自らも健全な循環の一部になる」 ということに根差した動きですよね?

渡利
うん。「自らも健全な循環の一部に」という言葉は少し難解な表現だけど、もっとシンプルに考えて、靴をコツコツ作ってきた地域を応援する。そう思って履くと自分も気持ちよくなれる。そんな風に受け取ってもらえたらなと

江川
そうですね。大切にしたい。応援したい。って思いを、履いてくださる皆さんの中に…なんていうか、喚起したいですね

物質的な豊かさではなく、精神的な豊かさを享受し、毎日を共にしてゆきます。手入れや修理を重ね、大切に履き続けられることにより、やがてブルーオーバーは「本当の姿」へと生まれかわることを信じています。履く人の時間とともに、自然が作り上げた味わいが深まり、友のような、あたりまえで特別な存在になることでしょう。

江川
この部分、本当にブルーオーバーらしいなと思うと同時に、思い切った表現ですよね

渡利
思い切った表現…? どこの部分?

江川
靴が新品の時じゃなくて、大切に履き続けてもらっている時こそが、ブルーオーバーの「本当の姿」だという…

渡利
自分の中ではずっとそう思ってて。ブルーオーバーの「本当の姿」とは、長く履きこまれて味わいのある靴であると同時に、履く人自身が成長したときの足跡として、その過程を呼び起こす存在になったときのこと。ともにした時間を大切にできた証として

江川
深いですね

渡利
そういった意味で、靴が製品として完成した時が終わりではなく、履いている最中もブルーオーバーの物語は続いているんです

江川
なるほど~。それが『履いてくださる皆さまへ』伝えたいことなんですね

渡利
実はそれだけじゃなくて。僕は、使う人(履く人)が自分自身を認めれるようなモノを作りたいと常々思っています。「自己肯定」といってもいいかな

江川
自己肯定、ですか

渡利
今は様々な情報にあふれ、信用するということ自体にエネルギーを使うしね。そういった世界の中で信じられるモノ。品質だけでなく、ブランドとして信じられるコト。そして持つ人がこれをえらんでよかったんだと思えるブランドでありたい

江川
情報過多な中で、靴に関してはブルーオーバーを履いていればもう迷わなくていいんだ!っていうような、ある種お守りみたいな存在になるということですね?
確かに、そういう物選びをすれば基礎みたいなものがしっかりしてきそうというか。自分を気分よく維持できそうです

渡利
今は多様性の社会であり、個人が自身の主張を発信できる。それは凄く良いことである反面、あまりにも増えすぎた情報によって、欲しい情報が見えにくくなったという側面もある

江川
難しい部分ですよね

渡利
であれば、僕自身がこうやってお話ししてどんなことを考えてブルーオーバーを進めているかを伝えようと思いました

江川
この連載の主旨そのものでもありますが、沢山の中の一つになってしまったとしても、声を届けない理由にはならないってことですね

ブルーオーバーを履く意味

私はこの靴を履いていただく人に、健全な精神を宿すと共に、おだやかであたたかい時間を過ごせるような機会となればうれしいと考えています。

江川
まあ、まとめると…ブルーオーバーという靴は履き心地だけでなく、気分も心地よくなるってことですね?(笑)

渡利
そうであれば嬉しいですね。ブルーオーバーの背景を知ってもらって、履いてもらう。物としてはあたりまえに「歩く」ことに注力した靴だけど、ブランドの想いを知ったうえで選んでもらうことで少しだけ気持ちよく暮らしていけるし、心地よく暮らすためのアンテナの感度もよくなる。これまでの生活の景色が少しだけ変わる。そんな感覚だね

江川
生活の景色ですか。自分が身に着けている靴、だけじゃなくて着ている服、使っている家具なんかにも、それを作っている人達がいるんだと気付いて物選びの基準にすると、確かに景色が違って見えるかもしれませんね。ブルーオーバーのコンテンツを通して、そんな風に感じてもらえると良いですよね

渡利
まあねぇ。ここまで突っ込んで話すことなんてないから、自分で言ってて気恥ずかしいけど…

これまでの製靴技術の蓄積とそれらを受け継ぐ人。そして彼等からうまれた靴を履く人へ。ブルーオーバーは、日本でうまれた健全で美しいスニーカーでありたい。そして履く人の時間と共に形づくられ、あなたにとって思い出深く、とても美しい靴となってほしいと願っています。

渡利
ブルーオーバーはどこにでもあるような靴ですが、ただの靴ではない。そんな風に思われたい。僕たちは靴を通じて、人や文化のレガシーを残していくこと、履く人にも脈々と受け継がれた日本人のアイデンティティを通して美しさを感じてもらいたい。そのためには僕たちの靴自体も健全で美しく、長く履いていけるように作らなければならないと考えています

江川
そうですね。それこそ、モノや情報があふれているこの時代、ブルーオーバーのようなスニーカーを見つけてもらったり、良さを感じてもらうことは簡単じゃないというのが本音ですが…

渡利
まあね

江川
でも、それが発信しないことの理由にはならないですから。今回、渡利さんから直接ブルーオーバーへの想いを聞くことができました。この想いが応援いただいているお客様に届けばいいなと思います。旗艦店ストラクトでも、店長の原田さんからどんどん伝わっていくといいですね!

渡利
ですね。本当に10年、応援していただいているお客様があってのブランドだし

江川
大切に履いてもらっている時こそ、ブルーオーバーの「本当」の姿になる…つまり、履いてくださるお客様あってのブルーオーバーということですね。また、ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました!

渡利
ありがとうございました

長すぎるコンセプト文についてデザイナーに聞いてみた

#01立ち上げの背景

#02民藝との共感

#03靴に込めた想いへ

#04履いてくれるみなさまへ

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