靴屋の小話#04|ずぼらな私のシューケア方法
ZUCCO ブルーオーバーのサンプル職人。型紙から、縫製、製靴までハンドメイドで靴を作り上げる。工場手配、資材段取りも行っている。 @blueover_zucco |
この連載は、私の仕事――つまり、靴をつくるということに関して、できるだけわかりやすくお伝えしたいと思いnoteに書いたもの数回分を、まとめたものです。
<ずぼらな私のシューケア方法>
今日はシューケアのこと。
シューケアの方法について、ネットで検索したら、ちゃんとしたやり方はたくさん出てくるので、ずぼらな私がどうしているかをご紹介したいと思います。
【よく見るシューケア方法】
- 馬毛ブラシ(黒色)で汚れをはらう
- クリーナーで汚れや、前にシューケアした際にのせていたクリームを除去する。
- 塗布用ブラシにシュークリームをつけて靴全体にまんべんなく塗る。
そのとき、靴の色が落ちていて、色をのせる場合は、色つきのシュークリームでもよい。 - ウエスで余分なクリームをふき取る。
- 豚毛ブラシ(ベージュ色)で艶を出す。
いろいろ道具がいります。
馬毛ブラシ、クリーナー、塗布用ブラシ、靴クリーム(乳化性)、ウエス、豚毛ブラシ…
実はこれでも少ないほう。もっと足そうとするとキリがないほどに、シューケア用品はあります。
【私のシューケア方法】
- ウエスで汚れをはらう
- クリーナーで汚れや、前にシューケアした際にのせていたクリームを除去する。
- ウエスにシュークリームをつけて靴全体にまんべんなく塗る。
- ウエスで余分なクリームをふき取り、ウエスを早く動かし艶を出す。
わたしはだいたいウエスで済ませます。それでも下の写真のようになります。
左がシューケア前、右がシューケア後。詳しい方にはお叱りを受けそうですが、、よければお試しくださいね。
これに、防水スプレーをふればパーフェクト!
靴クリームは2色か3色でいい
靴クリームは 乳化性のクリーム を選びましょう。硬すぎず柔らかすぎません。油分と水分がちょうどよいので、革に栄養を与えたり、保湿したりする効果が期待できます。
靴クリームは3色くらいで十分です。
- ニュートラルという無色のクリーム
- 黒
- 茶色系(自分が持っている靴より少しだけ暗い色)
色つきクリームは、たくさんの色があります。でも安いお買い物ではありません。1つ800円とか900円が普通の値段で、それ以上するクリームもあります。なので、よく使う無色、黒、茶色で十分です。茶色は最悪なくてもOKで、余裕があれば購入しましょう。
だいたいの靴が無色のクリームを塗りこむと、色が抜けていた部分が濃くなってくれます。
黒い靴は塗りこんで、濃くなっても物足りない場合もあるので、黒色のクリームで捕色しましょう。
茶色の靴で、無色を塗りこんで色が少し濃くなってもまだ色が足りない場合は、お持ちの茶色のクリームを塗ります。靴の色と、クリームの色がちょっと違っても、塗り込んだら思ったより目立たず、なじむ場合も多いです。
※念のため目立たない土踏まずなどの場所で確かめてから、塗りましょう。
※ヌメ革や素上げの革はクリームが染み込みすぎてシミになる場合がございます。ご注意ください。
色つきクリームをたくさん購入したことがあります。収集するのも楽しくて、色がきれいでたくさん集めました。
けれども、使う機会が少なくて、カチコチになってしまう。そんな悲しい結末が待っています。
<やってみると簡単、ベロア(起毛革)のケア>
ベロアのメンテナンスは難しくはありません。スムース革よりも簡単。ズボラな私にもピッタリな素材です。
用意するもの
写真の手前右側から
- ワイヤーブラシ
ホコリや汚れを落としたり、起毛革の毛並みを調整する。 - マスキングテープ
補色のときにソールに色が移るのを防ぐ。 - 消しゴム
起毛革用のラバークリーナー。目立った汚れに使う。
後方左側から
- 補色剤
スエードカラーリキッドを使用。スプレータイプもある。靴の色に近い補色剤を選ぼう。 - スエード用保革スプレー
栄養を与えてくれるもの。起毛革も革なのでスムース革と同じく保革しよう。 - 防水スプレー
一般的な防水スプレーで構わない。
手順
まず、紐を外します。ささっとズボラでケアする場合は外していませをが、今日は補色もするので紐を外しました。
汚れを落とす
ワイヤーブラシや消しゴムを使ってホコリや汚れを落としていきます。
ワイヤーブラシは起毛革の間に入ってるホコリをブラッシングで落としてあげます。
消しゴムはつま先のカカトについた黒ずみを中心に落としていきます。アスファルトや自転車などで擦れて汚れがつきます。消しゴムには砂も混じっているものも多く、ヤスリのような働きをしてくれます。
※ここで注意。どちらも強く擦りすぎないようにしましょう。
補色する
マスキングテープと補色剤を使います。
補色のときに、ソールや他のパーツに色が移るのを防ぐためにマスキングテープをつかいます。
補色剤はリキッドタイプのものを使用しましたが、スプレータイプもあります。リキッドの方が色が抜けた部位を中心に補色が可能なのと、他の補色を避けたい部位には飛沫しにくいです。
※全体を補色する前に目立たない土踏まず部分などで、補色を試してみましょう。問題なければ全体を補色。薄ければ重ね塗りもオッケイ。
ブラッシングする
補色が終わったら、毛並みを整えていきます。
汚れ落としのとき使ったワイヤーブラシをまた用います。補色をして半乾きの状態で毛並みを立たせます。
※乾ききると毛並みを起こすのに力が必要になり、革に負担が大きいため、半乾きがポイントです。
保革スプレーをふる
補色が完全に乾き切ったら、靴の全体に保革スプレーをふります。
スプレーをふった箇所は色が濃くなります。一部だけにしかスプレーをふらなければ、シミのようになってしまうので、全体にふりかけます。全体にシミを作るように。
※乾くと色は薄まりますが、ケア前よりは濃い色に。
保革スプレーが乾ききったらワイヤーブラシで毛並みを同じ方向に整える。やさしく。やさしく。
防水スプレーをふる
保革スプレーが完全に乾いたら、防水スプレーをふります。防水スプレーは雨などの水だけでなく、汚れにくくもしてくれます。
以上、メンテナンスでした。
出来上がり
左がメンテナンス後。右がメンテナンスなし。
分かるかなぁ。よく見ると、左のほうが、爪先部分の黒ずみがなくなっています。全体に色も濃くなっています。
余談
起毛革はスムース革よりも銀面が付いていないので、水に弱いように感じます。でもちゃんとケアをしてれば表面積が起毛革のほうが大きいから、防水性は優れているようです。こまめにケアしてれば、長くご愛用いただけるし、ケアも難しくない!